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福岡地方裁判所 昭和43年(わ)127号 判決 1968年11月05日

本籍

福岡県北九州市小倉区大字鳥町二丁目五三の六番地

住居

同県同市同区上富野寿和ノ台四〇七番地

バー・麻雀クラブ経営

浜田時正

大正一四年六月二六日生

右の者に対する旧所得税法違反、所得税法違反被告事件につき当栽判所は検察官北島敬介出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役八月及び罰金一五〇万円に処する。

被告人において右罰金を完納することができないときは、金二、五〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

但し、この栽判確定の日から二年間の右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、福岡県北九州市小倉区において、昭和三〇年頃からキヤバレー「グランド浅草」、麻雀クラブ「呉羽荘」を、同三四年頃からスタンドバー「仔馬」を、同四〇年八月一日からキヤバレー「クラブ九州」を経営しているものであるが、売上を除外する等して所得を脱漏するほか、所得を分割しその一部を弟浜田正夫名義で申告する等の不正の方法により所得税を免れようと企て

第一、昭和三九年度分の所得金額は一三、四三八万一、八六八円で、これに対する所得税額は五、七七万一、六〇〇円であつたにかかわらず、別表(一)記載のとおり、昭和四〇年三月一五日所轄小倉税務署長に対し、所得を全体として過少にし、しかも前記「仔馬」は前記浜田正夫が経営しているように装つて所得の分割した虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右正当所得税額と申告所得税額との差額五、一三万三、九三〇円を逋脱し

第二、昭和四〇年度分の所得金額は一一、三五万〇、六八四円でこれに対する所得税額は四、五九万二、四〇〇であつたにかかわらず、別表(二)記載のとおり、昭和四一年三月一五日所轄小倉税務署長に対し、所得を全体として過少にし、しかも前記「仔馬」および「クラブ九州」は前記浜田正夫が経営しているように装つて所得を分割した虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右正当所得税額と甲告所得税額との差額三、五六万一、二〇〇円を逋脱し

たものである。

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する各供述調書

一、被告人の収税官吏大蔵事務官に対する各供述調書

一、被告人作成の各上申書

一、酒井勇、浜田正夫、千綿静喜、永沼博文(二通)、李禧元の収税官吏大蔵事務官に対する各供述調書

一、金武城(但し、記録六一丁)、種子島忠夫、梅津泰久(但し、記録六九丁)、原田教明(但し、記録八五丁)、伊藤秀孝(但し、記録一〇八丁)、黒田正七郎、河野通明、清水義則各作成の証明書

一、安田伊三男、松尾稔(但し、記録三三〇丁)、徳永栄一、滝口明男、佐武茂男、中井隆、安藤信夫、青木半治、草場只四、松尾稔(但し、記録四六二丁)、野田庄太郎、沢野忠雄、檜垣光徳、塩崎賢治、力丸良之助、永沼博文各作成の上申書

一、株式会社住友銀行北九州支店作成の「普通預金勘定出入記入表」と額する書面

一、服部保朗作成の保険料払込証明書

一、正路寿一作成の入金証明書

一、深沢明夫、岸忠道、尾藤紀之各作成の取引高証明書

一、日新火災海上保険株式会社小倉営業所作成の「火災保険契約写送付の件」と題すを書面

一、畑中義孝作成の「取引の明細について」と題する書面

一、山口万夫作成の「事業税等の納付状況について(回答)」と題する書面

一、波多野一治作成の市税納付状況について(回答)」と題する書面

一、小倉税務署長作成の「所得税の納付状況について(回答)」と題する書面

一、大蔵事務官川崎勲雄作成の調査報告書三通

一、被告人作成の「物件還付受領証」に添付の所有権移転登記申請書写

一、押収してある権利証書一綴(昭和四三年押第八七号の三一)

一、押収してある電話加入申込承諾通知書、領収書一綴(右同号の三三)

一、押収してある所得税確定申告書(浜田時正昭和三九年分)(右同号の七四)

一、右同(浜田時正昭和四〇年分)(右同号の七五)

一、右同(浜田正夫昭和三九年分)(右同号の七六)

一、右同(浜田正夫昭和四〇年分)(右同号の七七)

(法令の適用)

被告人の判示第一の行為は、所得税法の一部を改正する法律(昭和四三年法律二一号の附則二条、同(昭和四二年法律二〇号)附則二条、二一条、同(昭和四一年法律三一号)附則二条、所得税法(昭和四〇年法律三三号)附則二条、三五条による改正前の所得税法の一部を改正する法律(昭和三九年法律二〇号)六九条一項に、判示第二の所為は前記所得税法(昭和四〇年法律三三号)二三八条一項にそれぞれ該当すから、いずれも所定刑中懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑につき同法四八条により合算した額の範囲内で、被告人を懲役八月及び罰金一五〇万円に処し、なお同法一八条により被告人において右罰金を完納することができないときは金二、五〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、被告人が本件検挙後捜査当局の調査等にも協力し、改悛の情も顕著で、本件に関する更生決定に基づく本税、重加算税、延滞税も既に支払済であることなど諸般の情状を考慮し、同法二五条一項により裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小川宜夫 裁判官 佐々木一雄 裁判官 福永正子)

別表(一)

<省略>

別表(二)

<省略>

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